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ピロリ菌は正式名称(ヘリコバクター・ピロリ)といって胃の 粘膜に生息する悪い菌です。
胃の中は強い酸性だから細菌は 生息できないイメージがありますが、このピロリ菌はピロリ菌が出している「ウレアーゼ」という酵素で胃の中の尿素を分解しアンモニアを吐き出します。 アンモニアはアルカリ性なので、ピロリ菌の周りが中和され、胃の中でも生き延びることが出来る、という訳です。このウレアーゼを含めた毒素が胃粘膜を傷つけ、不快な症状を発生させる原因となっています。
ピロリ菌に感染した人 のすべてが慢性胃潰瘍になるわ けではありませんが、ピロリ菌 に感染するとまず、すべての人 が慢性胃炎となります。その中 の一部が進行して鳥肌性胃炎、 萎縮性胃炎、さらにその一部が 慢性胃潰瘍や胃がんになりま す。 そのため、除菌をすべき かどうかの判断が必要となって くるのです。
以下の様な悪影響があると考えられます。
「暫く前から胃の調子が何となくおかしいなあ・・・」と感じている方、放っておかずに一度胃の検査を受けてみませんか?もしかすると、ピロリ菌が原因かもしれません。
患者さんの中にはまさかピロリ菌に感染してるとは思わず、不快な症状を抱えたまま放置してる方が結構いらっしゃいます。除菌をしたのち体調が良くなり、生活のクオリティーを取り戻した方は数少なくありません。
「私は単に胃が弱いから」などと自己判断せず、調子が優れない場合は早めに受診されて下さい。
もし、ピロリ菌保菌者だった場合、症状の軽い内に治療した方が、より効果が高い事も最近の研究結果では出ています。除菌治療の効果が現れなかった方はまさにその辺りに差が出ているのかもしれません。
変だな、と思ったら早めの行動が一番です。
今までは、健康保険が適用される病気は胃潰瘍と十二指腸潰瘍のみでしたが、ピロリ菌が胃に潜伏する時点で、病気になる確率が高いとされ、2013年には慢性胃炎に対しても健康保険が適用されるようになりました。
ただ、ピロリ菌がいると胃の病気にかかりやすくなりますので、健康保険が利かなくても除菌治療をする人は増えています。
ピロリ菌保有者全員が自覚症状があるわけでなく、また必ずしも100%潰瘍を発症するわけでもありません。
ですので、必ず除菌すべきとい う事では無いのですが、潰瘍を頻繁に繰 り返したり、胃炎が強い人には除菌を行う事をお勧めしてます。また、最近の「臨床研究」では除菌による胃癌の抑制 効果は胃炎症状が軽い人ほど効果が高い傾向にあるそうです。
健康保険は適用出来きなくても、将来的に胃ガンになる 事を心配されている方には、「自費」で除 菌する事も選択肢の一つとして考えてみると良いでしょう。
感染経路にはさまざまな理由があります。
60歳以上の方にピロリ菌保有者が多いのは、昔の劣悪な衛生環境によるものとされていますが、最近の若い方に多いのは親子感染、兄弟感染などがあげられます。
これをすれば必ずピロリ菌に感染しません、という防止策はありませんが、5歳以下の乳幼児がいるご家庭の方には親が噛み砕いた食べ物をお子さんに食べさせたり、同じ箸を使って食事を与える事は避けて頂きたいと思います。この時期の子供たちの胃の中は酸性度が弱く、ピロリ菌が生き延び易いのです。ですから、周りの大人は乳幼児に対して特に気をつける必要があります。
〜胃、十二指腸潰瘍と関連〜
渡慶次千(とけし内科院長)
胃・十二指腸潰瘍(かいよう)は極めて頻度の高い消化器疾患で、典型的には胃の痛み(とくに十二 指腸潰瘍では空腹時に痛みが出 現することが多い)、胸やけ、吐血、下血などの症状が出現する。ただし瘢痕(はんこん)期には無症状のことが多く、健康診断などで指摘されることも多い。
原因は最近までストレスによるものとされ、経過中に再燃、再発を繰り返すことが多く、治療が長期に及び難治性となることも多かった。
しかし近年になり、へリコバクター・ピロリ菌(以下ピロリ菌)との関係が重要視されるようになってきた。再発を繰り返したり、なかなか治らない難治性潰瘍はピロリ菌が原因だったのである。
ではピロリ菌ってなにものなのであろうか? 今から100年前「胃袋の中に細菌がいる」と最初の報告があった。しかし、強烈な酸性環境である胃袋の中に、細菌がすめるとは誰にも信じてもらえず、この偉大な報告は長い間無視され てしまった。これは常識にとらわれた考え方による弊害であろう。
ところが1983年、オーストラリアの二人の研究者が再び細菌の存在を証明し、88年にこの細菌を除菌すると潰瘍の再発が有意に抑制されることを報告してから強い関心が寄せられるようになった。
ピロリ菌は長い鞭毛(べんもう)をもつ細菌で、胃袋の粘膜細胞の表面や粘液の中に生息し、初期に胃の幽門部(ピロルス)より発見されたため、ピロリと名付けられた。「へリコ」というのは、細菌の尾っぽがヘリコプターに似ていることに由来する。
わが国では2000年からピロリ菌の除菌療法が保険適応となった。この治療法は抗生物質と胃酸を抑えるプロトンポンプ阻害薬を併用するもので一週間の投与により八割以上の再発予防効果が示されている。
それでは感染しているかどうかを知るにはどのような検査が必要なのだろうか。一つは内視鏡検査時 に胃の粘膜を少しとり、培養、 組織鏡顕、アウレーゼ試験(ピロリ菌の独特の反応を見る)を行う。また内視鏡を必要としない検査では採血による抗体検査、吐く息の分析(尿素呼気試験)などで知ることもできる。
このような検査で胃、十二指腸潰瘍の存在とピロリ菌の感染が確認されれば、ぜひ除菌療法を考慮するべきである。今まで長期に”胃ぐすり”を服用していたのが一週間の治療で完治する可能性がある。
また現在では慢性胃炎や胃がんとの関連も強く疑われている。何らかの腹部症状があれば胃内視鏡検 査(胃カメラ)を受けてみてはいかがであろうか。
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